12月10日に自由民主党・公明党による「令和3年度税制改正大綱」が公表されました。その中において、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、孫等が受贈者である場合に贈与者死亡時の残高に係る相続税額の2割加算が適用されないこと等が節税的な利用に繋がっているとの指摘を踏まえ、格差の固定化の防止等の観点から所要の見直しを行った上で、適用期限を2年延長することとされました。
(1)直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置については、次の措置を講じた上で、その適用期限を2年延長することとされました。
信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合(受贈者が23歳未満である場合などを除く。)には、その死亡の日までの年数にかかわらず、同日における管理残額を、受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなす。
上記1.により相続等により取得したものとみなされる管理残額について、贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、管理残額に対応する相続税額を、相続税額の2割加算の対象とする。
(2)直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置については、次の措置を講じた上で、その適用期限を2年延長することとされました。
贈与者から相続等により取得したものとみなされる管理残額について、当該贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、当該管理残額に対応する相続税額を、相続税額の2割加算の対象とする。
受贈者の年齢要件の下限を18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げる
その他申告書等の書面による提出に代えて電磁的方法により提供ができるといった改正があります。
なお、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与の非課税措置については、贈与の多くが扶養義務者による生活費等の都度の贈与や基礎控除の適用により課税対象とならない水準であること、利用件数が極めて少ないこと等を踏まえ、次の適用期限の到来時に、制度の廃止も含め、改めて検討するとのことです。
令和3年度税制改正大綱
https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html
相続や遺贈によって財産を取得した人が、その取得した財産を国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附した場合には、一定の要件を満たすことでその寄附した財産について相続税を非課税とする特例の適用を受けることができます。
1.対象となる財産
寄附した財産は、相続や遺贈によって取得した財産であること。
相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
※相続財産を処分した代金を寄附しても相続税は非課税になりません。
2.寄附の期限
相続税の申告書の提出期限まで。
3.寄附の相手
国、地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる公益を目的とする事業を行う特定の法人又は認定非営利活動法人(認定NPO法人)。
※特例の対象となる法人は政令で定められており、既に設立している法人に限ります。
4.特例を受けるための手続き
相続税の申告書にその適用を受ける旨を記載し、かつ、その適用を受ける寄附財産の明細書や一定の証明書類を添付することが必要です。
※一定の証明書類は、寄附先から取り寄せるものがありますので、寄附の際、相続財産からの寄附であることを伝えて寄附をするとスムーズです。
なお、寄附金控除対象団体への寄附であればこの相続税の非課税措置に加え、所得税・住民税の寄附金控除も利用できるというメリットもあります。
相続財産の一部を寄附して社会貢献ができ、同時に相続税の非課税と寄附金控除のメリットを受けることができるこの特例ですが、適用を受けるためには上記概要で示した他にも様々な要件を満たす必要がありますので注意が必要です。相続財産の寄附という選択をお考えの場合は事前に相談することをおすすめします。
一般社団法人等は、登記のみによって容易に設立することができ、事業目的にも制限がありません。また株式会社と違って持分が存在しないため、当該法人が保有する財産が個人の財産に反映されることはありません。そのため近年では節税目的による一般社団法人等の設立が相次いでいました。
その仕組みは、理事が同族関係者で占められている一般社団法人等を設立して資産を移すことによって、相続財産から除外し、その後も同族関係者が支配することによって実質的に非課税で資産を相続できることになります。
このような租税回避を防止するため、平成30年度税制改正により特定の一般社団法人等に対して相続税を課税する規定が設けられました。
平成30年4月1日以後に特定一般社団法人等の理事(理事でなくなってから5年を経過していない者を含む。)が死亡した場合には、その法人に対して相続税が課税されることになりました。
具体的には、法人の純資産額を相続開始の時における同族理事数に1を加えた数で除した金額を遺贈で取得したものとみなして課税します。
なおこの制度は、公益社団法人又は公益財団法人、法人税法に規定する非営利型法人(非営利徹底型・共益型)は除かれます。
特定一般社団法人等とは、次に掲げる要件のいずれかを満たす法人をいいます。
1.相続開始の直前における同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超えること。
※同族理事とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人又はその配偶者、三親等内の親族その他のその被相続人と特殊の関係のある者をいい、被相続人が役員となっている法人や被相続人が支配する同族会社の役員・従業員も含みます。
2.相続開始前5年以内において、同族理事数の総理事数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
この制度は、過去に設立した一般社団法人等については、経過措置が設けられ、平成30年3月31日までに設立されたものである場合には、令和3年4月1日以後の同族理事の相続から適用されることになります。
(参考)特定の一般社団法人等に対する課税のあらまし
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201909/01.htm
東京商工リサーチの調べによると、令和元年に設立された一般社団法人は、6,083社(前年比1.3%増)となっています。平成27年には11.4%増と2ケタの伸び率でしたが、税制改正後の平成30年には6.0%減とマイナスに転じており、伸び率は鈍化しています。
節税としてのメリットが薄くなったとはいえ、争族を避けるために遺産分割の対象外にできるというメリットもあり、一般社団法人等の設立においては、法人形態、理事の構成など慎重に検討する必要があります。
法定相続情報証明制度とは、被相続人や相続人の関係を法務局に証明してもらう制度です。この制度が創設された理由はいくつかありますが、主には相続人に不動産の相続登記を促すためといわれています。
近年、不動産を相続しても相続登記をしない方が増えています。これにより、所有者不明土地問題が深刻化し、固定資産税の徴収や老朽化に伴う危険の発生等が社会問題化しています。そこで、国としても、相続関係の証明を容易にして可能な限り相続登記を促進しようと考え、平成29年5月から運用が開始されています。
法務局が発行する法定相続情報証明書は、不動産の名義変更や預貯金払い戻し、株式の名義変更などの際に利用できます。
これまで、不動産の相続登記や銀行預金の解約手続を行う場合、原則として、被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本、改正原戸籍、除籍謄本を取得して、その原本を法務局や各金融機関に提出しなければいけませんでした。
しかし、法定相続情報証明制度を利用すると、法務局の登記官が被相続人の相続関係について、内容が間違いないことを確認したうえで、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを交付します。相続人は、その法定相続情報一覧図を提出すれば、各種の相続手続ごとに戸籍等をわざわざ提出しなくても、相続手続きを進めることができるようになります。
たとえば、法定相続情報一覧図を提出すれば、預金の解約等を行う場合に戸籍謄本等の原本を提出する必要なく預貯金の解約や払戻しを行うことができます。また、証券会社における名義変更の手続でも、法定相続情報一覧図を提出すれば戸籍謄本等を提出する必要がなくなります。